本を読んで今日を生き延びる

うつでぎりぎりの社会人が小説で現実を逃避しながら生き延びます

間宮兄弟 / 江國香織

読み心地のよい江國さんの文章。
すう~っと染み込むような感覚で、
ラストまで気持ちよく読めた。

絶望的にモテなくて、冴えない、キモいとか思われちゃうような、兄弟。
でも、楽しく毎日を着々と生きてる。

派手さがまったくなくて、
子供の無邪気な夏休みみたいな雰囲気が続いていた。
一冊を通して、ずっと。

こういう男性はたくさんいるんだろうけれど、
こういう心持ちで暮らしていけることはファンタジーなんじゃないかなと、想像した。
あと、兄弟を応援する若い女の子が、
わたしには究極のファンタジーだと思った。
江國さんのファンタジー感はとても救いがあって、好き。
ないってわかっていることを、幻のように見せてくれて、
ないってわかっているからこそ、すごく美しくて理想的で愛しい。

薄い膜を張ったようなきれいな世界は、
冴えない兄弟が主人公のこの話でも健在で、
江國さんってすごいなと思った。
世界観の作り方が、他のどの本にもなくて、
江國さんの本でしか味わえないこの気持ちを、
いつも裏切らずに提供してくれる。

女性が主人公の話のほうが、好きだけど、
この間宮兄弟も、よかった。