本を読んで今日を生き延びる

うつでぎりぎりの社会人が小説で現実を逃避しながら生き延びます

ペンギン・ハイウェイ / 森見登美彦

話の中盤くらいまで正直あまり盛り上がらず、
このままだったら退屈だなあと思ったけれど、
後半に入って一気に楽しくなり、良かった。

毎度のことだけれど、
この著者の作品は、世界観が不思議で独特でへんてこなので、
そこにすんなり入っていけるかどうかで、
感想がだいぶ変わる気がする。

今回は子供が主人公だったからか、
世界に入るまで少し時間がかかった。


しかし、主人公の少年の生活を見ていると、
小学生であることをもう存分に満喫していて、
わたしは自分の生活を振り返って「奴隷かよ」と本当に落ち込んだ。

夏休みとか、おばあちゃんちとか、探検や研究、夏祭り。
すごい破壊力ある。
うらやましいなんてもんじゃなくて、なんか、
もう二度と永遠に絶対に手に入らないキラキラしたものすぎて、もはや神々しいに近い。
想像しただけで気持ちよくなる。


SF…?って言えるの…?ってなるくらい、
ふんわりした結末だとわたしは思うんだけれど
(だいぶファンタジー寄りじゃないかなあ)、
それも作品の雰囲気に合ってて良かったようにおもう。

決して好みのタイプの本じゃないし、すごい面白かった!っていうほど満足感あるわけじゃないんだけど、
なんか、愉快で、かわいいのに少し寂しい、乾いた感じの不思議な読後感を残したので、
なんてことないときに、ちょこちょこ思い出すかもしれない。

生物はみんな死ぬことを知って、怖がる妹。
よちよち歩くペンギン。
お姉さんのおっぱい。
方眼紙のノート。
森と、そこに浮かぶ球体の海。

考えれば考えるほど、完璧な世界観だなあ。。
他の人には書けないし、他の小説では味わえないこの感じをおもうと、この著者の作品はほんとに貴重だなあ。。